圧巻のイマージング!20分の激闘

再びユスリカのライズに挑戦

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おおよそ1kmほどだろうか、一通りユーロニンフィングでテンポよく釣り上がり十数匹をランディングできた。初めての川でこの釣果は、フライの選択や釣り方が完全にドンピシャだったと言っていいだろう。1つ1つのポイントを、「魚がいるかいないか?」という感覚でタイトに釣り上がることが出来た。まさしく、チェックニンフィングである。(川をチェックするという意味)こういう感覚でニンフィングができるのも、ユーロニンフィングの面白さである。

スピード感、タイト感、アグレッシブ感、グルーブ感、ブースト感、ダイレクト感…、
このニンフィングには、今までの渓流釣りとは一味二味違った感覚を持つことができる。特に、タイトにスピードをブーストしながら釣っていけるダイナミックなイメージがそこにはある。

車に戻り時計を見ると、まだ、夕方まで時間はある。Mさんは、「朝のポイントへ戻ってみましょう、またライズが始まっているかも知れません」ということで、ホテル裏のポイントへ戻ってみる。

朝のライズポイントには釣り人が数名入っている。そこで、今度は上流へ釣り上がってみる。大きく右へ蛇行死している流れを上流へ向かいながらライズを探す。ウェーディングで右岸に渡り角度を変えながら観察を続ける。しかし、魚の波紋はどこにも見当たらない。

セッティングをユーロニンフィングのシステムに変更し流れを攻める。左岸にぶつかり少しえぐれている筋にタングステンソラックスニンフをトレースする。

ストラクチャーの多いこの流れは、ボトムの地形を読むのが難しい。小さなスイングやターン、ダンピングを駆使しながら釣り上がるが、反応はない。おそらく、釣り人の行き来が多く攻められ続けているこのポイントには、魚は既にいないと私は判断した。

ガイドのMさんには悪いが、このポイントは早々に見切った。魚から発せられる生命エネルギーがまったく私には感じないのだ。

「朝のポイントに戻りましょう。」

「そうですね」

左岸から右岸に戻り、セッティングをイマージャーのシステムに戻した。



北海道レインボー55㎝

絶対仕留める!その戦術

朝1番に入ったポイントを再び訪れる。このポイントは今の時期は最高のライズフィッシングができるとMさん。数人が釣りをしていたが、流れがぶつかりわんどになっている一番難しいポイントには人が入っていない。そこは敬遠し、手前の緩やかな流れの魚を狙っている。

やはり、あのワンドの奥の魚を狙うのは難しいのだろう。正確なキャストが出来なければ、せり出した木にフライを取られ続けるだけである。

私は、朝と同じポイントへ入りアダルトのドライフライで攻め始める。

落ち込んで瀬に入る手前のひらきで散発のディンプルライズを繰り返す魚を狙う。上流からだと微妙にレーンがずれ上手くドリフトできない。遠巻きに魚の斜め下流へポジションを取り直し、バックハンドキャストでフライ先行のトレースをする。

カーブを描いたティペットはフライの上流へ着水し完璧なフライ先行のドリフトになる。何度も何度もこの狙い方でライズ地点を通過させるが魚は反応しない。そして逃げない。

10投以上同じフライ、同じ流し方で攻めた。しかし、全く無視。ドリフトは悪くはない。しかし、出ない。それでも私はしつこく流した。ライズフォームからこの魚は50cmはあるだろう。

結局、20投以上を投げ続けた。しかし、反応はない。
諦めムードが漂う中、私は次の戦術へと頭を切り替えた。サイケデリックイマージャーを投射し一発で仕留めてやると考えたのだ。

Note
アダルトに反応がなかったので、すぐに次のフライに変えるのも一つの戦術である。しかし、この時は、魚がうんざりするほど同じアダルトフライで同じ流し方をした。魚は完全にこのフライを見限っている。それでもしつこく同じフライを見せ続けさせたのだ。そして、いよいよ本命のフライを流す。形状やカラー水面への絡み方、全ての機能が全く別物のフライである。この大きな変化と魚の本能を揺さぶるようなオーラを放つフライによって、このレインボーは判断がかく乱され、目の前に流れてきたサイケデリックイマージャーを逃すまいと襲い掛かったのである。魚の判断能力を揺さぶる戦術が100%生きた会心の釣りであった。
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私は再び上流へ移動し、45度の角度でフライを投射できるポジションを取った。魚は定期的にディンプルライズを繰り返す。大量に水生昆虫は流下しているがアダルトには出ない。ライズを観察しながら、14番のサイケデリックイマージャーを3Xのティペットに結ぶ。
何度か結び目を強く引っ張り、強度を確認する。「これでいい、一発で決めてやる」私は無音のフォルスキャストを魚の上を通過しない角度で1回繰り返し2回目で魚の上流2mの位置に置くように投げた。完璧なプレゼンテーションだ。フライはそのまま流れに絡みながら流れていく。フライが魚の頭上に到達したであろう所で、小さな違和感が走った。

次の瞬間、「もわっ」と水面が盛り上がり魚は私のフライを加えた。でかい魚のディンプルライズはなかなか迫力がある。

「来たぞ」そう確信した私はロッドティップを上下にフリップする。リーダーが引き込まれフライラインがピンと張った。「やっぱりきたか!一発だ!」私の戦術は狙い通りであった。アダルトフライには完全な無視を決め込んでいた50cmオーバーのレインボーが、なんの躊躇いもなくサイケデリックイマージャーにアタックしてきたのだ。

フライを押さえ込むように咥え、魚は下へ潜った。強烈なランはない。魚も何が起きたのか整理がつかないようで、じっとこの出来事が去るのを堪えているかのようだった。ロッドに伝わる振動は重い。これは手強い。

じわじわと、リールを巻き魚との距離を縮めていく。このまま大人しくランディングできるはずはない。激走に備えでディスクブレーキを調整する。もごもごと頭を左右に振っていた魚は、私の姿に気付いたのか、危険を察したのか、次の瞬間、流心の強い流れに乗ろうと急激に走り出した。ギュルギュル〜とリールは悲鳴を上げ、あっという間にフライラインが10m近く持って行かれた。物凄いパワーだ。「やばい、これ以上走られると太く強い流心に乗られてしまう」
「ここで食い止めないとまずい」

少し腰を落とし膝を曲げエクステンションバッドを下腹に押し付ける。ロッドバッドに魚のパワーが集中するように構え、これ以上走られないように踏ん張る。
がしかし、魚の強烈なパワーは一向に衰えるどころか増していく感じだ。これ以上ロッドを強く煽ると折れるかも知れない。そう思わせるほどの重く且つ鋭い抵抗であった。
さすがにHends4番での強引なやり取りは難しかった。(今のBILZY4番なら、バッドはもっと強く粘りがあるので、もう少し楽に魚をコントロールしながらランディングできただろう)

それでも何とか激流の一歩手前で踏ん張り続けながら、魚の体力が弱まるのを待った。
レインボーは左右に頭を振り、時折ランを仕掛ける。走り出そうとする気配を察知し、走り出す前に強くロッドを煽る。何度かこのやり取りをすると魚は水面にブォ〜っと浮いてきた。

「あれ、もしやスレか?腹から浮かび上がったぞ!だからこんなに強いのか?」

「・・・・」

「ティペットが体に巻きついてますね!やばい!」

「そ・・そういうことか」

魚体に巻きついたティペットが解けるように、ロッドを前後左右に動かす。

また走る。しかし耐える。また走る。耐える。何度も繰り返す内に、ティペットは解けたようだ。

「口に掛かってますよ!しっかり」

良かった、スレではない。しかし、それにしてもこのパワーは何なんだ!

近くまで寄ってはくるが、最後の最後ランディングネットまでは届かない。
仕切り直してバッドにパワーを溜め、腰で魚を引き寄せる。

後ろで見守っていたMさんが、リリーサーから外した私のネットを手にしジャブジャブと川へ入り頭から魚をネットインさせた。

20分近い激闘だった。
あたりは薄暗くなりかけ、川は神秘的な美しさに覆われていた。

夕方になり気付けば雨は本降りになっていた。しかし、私にとっては実にすがすがしい雨であった。コンプリートに近い戦術で、野生のレインボー50オーバーをこの手にしたのだ。私の体は、心地いい疲労と充足感で溢れんばかりであった。

湖畔のホテルに戻り、最上階の温泉に入る。今日1日の出来事をゆっくり思い出す。
おおよそ、私が思い描いていた釣りは出来た。戦術が見事にはまった。

ユーロニンフ、そしてイマージェントライズハンティングの最高のフィールドテストになった。世界中、どこの釣り場に行っても、イマージェントハンティングは成立し通用するだろう。
通用するだけでなく、高度なライズフィッシングとして最高にエキサイティングな釣りができるし、何より釣れる。そう私は確信した。


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「イマージェントライズハンティング」
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JFFA


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