CHAPTER3 ネイティブにユーロニンフで挑む!

湖畔の案内所で、温かいそばを食べて一息入れる。

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「午後は、下流域を叩き上がってみましょう、ネイティブできれいな魚が釣れると思います。」「oK、そうしましょう」

小雨が降ってきた。これ以上強くならないことを祈る。
川沿いの蛇行する道を車で15分ほどいったところで道路脇にある小さなスペース車を止める。

そそくさとレインジャケットを着てその上から何百とあるタングステンニンフが入った重いベストを羽織る。逆にベストの上からレインジャケットを着る人も多いが、レインジャケットが動きを邪魔することもあるし、ベストにある多くのポケットをスピーディー且つ機能的に使えないので、私はこの着方をしている。

Mさんに先導してもらい林の中に分け入っていく。道はない。だが、正確な足取りで最短距離をポイントまで進む。藪漕ぎのこの場面だけでも、地元に精通した人間の案内の大切さを思い知らされる。私一人では、おそらく一週間かけてもここには辿り着けないであろう。

CHAPTER3 ユーロニンフが爆発

目指すポイントへ到着。川をざっと見渡すと私がよく行く関東の川と渓相も近い。瀬とプールが交互に続いている流れだ。

「まずドライで行ってみましょう。
一週間前にはヒラタカゲロウがハッチしていてドライでも行けました」

虫がハッチしていて魚の活性が上がっていれば叩き上がりで行けるはずだ。

Mさんの言葉を受け、CDCフローティングニンフで行くかメイフライパラシュートで行くか一瞬迷う。フライボックスを覗き込みながら、数秒思考する。そしてパラシュートで行くことに決める。半沈み系のパラシュートだ。視認性の良さと浮く姿勢、そして浮力の持続性を重視した。もしパラシュートで食いが浅い場合は、フローティングニンフやライトフェザントテールに変える作戦である。

手前のヒラキからフライをフワッと流れに乗せていく。長い距離は流さない。1m~2mのショートドリフトでくまなく流れの筋をトレースしていく。複雑に絡み合う流れだが、ドリフトはそれほど難しくない。十分なティペットのたわみがあれば、メンディングも一回程度でナチュラルに流せる。

5Xのティペットをひとひろ継ぎ足し、全長12フィートほど。それほど長くはない。だが、この長さで十分である。

軽快にキャストを開始する。ドライフライの叩き上がりは、軽快なテンポとリズムが重要。パラシュートは空気抵抗が大きい。だからティペットが撚れないようにフォルスキャストも2~3回で素早くフライを乾かし流れにプレゼンする。

キャスティングはリズム感が非常に重要で、このリズム感でその人の釣りが決まってしまうところがある。重たいリズムよりも軽快で切れがよくアップテンポを意識するとリズム感が生まれてくる。

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肩からヒラキ。そしてプール。本命ポイントと思われる大岩の脇の2つの流れがぶつかって流速が緩くなっている場所。ここが一番深い。そして最後の白泡が立つ落ち込みと丁寧に探ったが何の反応もない。

今日はハッチはなく魚も沈んでいる、ということだ。釣りというのは消去法で釣れない原因や問題点を次々に潰していく作業がとても大切である。潰して潰して、そして最後に釣れる要因、要素だけが残ることになる。

次にやるべき戦略がこれで確定した。ユーロニンフィングだ。

最初の場所に戻り、ベストのバックポケットから1フィートのブランクを取り出す。ロッドを9フィートから10フィートに変身させる。ユーロニンフィングではこの1フィートの差が大きなアドバンテージになる。何よりニンフィングが断然やりやすくなるのだ。ヘビーなニンフも10フィートロッドのしなりでスムーズにキャストできる。

ベストのリール収納ポケットからニンフィング用のラージアーバーリールを取り出し、付け替える。リーダーだけをニンフィング用に変えることでもいいのだが、この時は既にユーロニンフィング用にリーダーセッティングされているリールに交換する。その方が素早く釣りが展開できる。こういうところでも、スピード感は大切である。

切れの良さ、スピード感、リズム感、アップテンポ、軽快さ、前のめり感、瞬発力、そしてしなやかさ・・。

こういう要素は、その日の釣りを手中に収める為には欠かせない。

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美しい野生との出会い

2リグ、コンペティションストライクインジケーター、ノンテーパーフロロリーダーにサープラスノットをセッティングした独自のニンフィングシステムでこの流れの野生を狙う。

手前の筋から45度ニンフィングキャストで、素早くタイトに釣り上がる。
45度トライアングルのドリフト理論で余分なモーションは削ぎ落とされている。

数等目で、ストライクインジケーターがスッと引き込まれフックセットに成功、30cmほどのレインボーがドロッパーをがっつり咥えていた。ホットスポットを加えたジグニンフが上顎にしっかり掛かっている。申し分ないフックセットである。素早くランディングしてリリース。

ドロッパーにきたということは、この魚は中層に定位していて餌を待っていたのだろう。ということは、この流れのボトムにはまだまだ大きい魚が陣取っているはずだ。
更にタイトに打ち返してニンフを流れに何度もトレースしたいところだ。リバウンドキャストでガンガン打ち返していく。このニンフィングキャストはまったくバックが取れない場所でもまったく問題なく軽快に打ち返していける。

このポイントで一番の深場に差しかかる。そこで、深くなる手前の早い流れのミドルレンジにフライを打ち込み、ボトムを取りながら流していく。どこにフライを落とすかで勝敗は決まる場面だ。急激に深くなっていくポイントに差し掛かった時、セカンドフォールを掛け小さな駆け上がりを舐めるようにフライを沈下させていく。隙のないボトムニンフィングに徹する。こういう深場は、しつこく何度も流したい。

ナチュラルドリフトしているようでしていない。
かといって、ドラグが不自然に掛かったような流し方はしない。

テンションを維持しながら、尚且つ自然な水生昆虫の生命力を演出していく。
生き抜こうとする昆虫の意思を感じさせるようなドリフトだ。

脱力した繊細なロッドワークと大胆な読みが交差する。

数等目、「グゥン」という電気ショックのようなダイレクトコンタクトが腕に走りフックセットに成功する。この瞬間はたまらない。エネルギーのある重い当たりである。これは大物だ!

ユーロニンフィングでも、完全なる◯◯は成功した。
狙い通り、逆算力の勝利だ。

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ガッチリとアンカーに食らいついたネイティブレインボー
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申し分のない尾びれ。

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美しい野生である(ランディングネットは縦55cmある)

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圧倒的な野生の美しさに思わず、「もう釣られるなよ。長生きしろよ」と言葉が口に出る。

川をチェックするかのような爆釣

最初の淵で、美しい大物に出会うことができ最高のニンフィングがスタートした。
この淵からテンポよく、リズミカルに釣り上がっていく。瀬が続く流れの中にも、小さなポケットのような深みがある。その深みに魚は付いているはずだ。水深かは60cm~70cmほど。大物は期待できないが、数は伸ばせるだろう。

アンカーをピンポイントに打ち込んでいく。流す距離は50cm~1mほど。ショートレンジをショートドリフトでバシバシ打ち返してく。それは、アップテンポのドライブが掛かったロックを演奏しているような感覚にも似ている。

魚が付いていそうなポイントは見逃さずトレースしていく。アンカーはハックルバーネストニンフ、リグはレッドホットジグニンフである。どちらもジグフックにタングステンビーズヘッドで重くしてあり、瞬時に流れのボトムを取れるようなシステムだ。つまり、2ヘビーアンカーニンフのシステムである。

従って、ロッド操作を上手くこなしていかないとすぐに根掛かってしまう可能性も大だ。メンディングをしてナチュラルドリフトしていくというような、もたついたニンフィングはしない。

ロッドティップを30度から50度の間で巧みに操作し、ターンとフォールを繰り返していく。攻めのニンフィングである。ほとんどは、2~3回流して当たりがなければ次に行く。間違いなく魚が付いているであろう深場では、逆にしつこく何度もトレースを繰り返す。セカンドフォールも細かく入れていく。そして、フッキングに持ち込む。メリハリが重要だ。この強弱を付けた釣り、リズミカルなテンポで釣り上がるニンフィングは、かなり心地いい。全てが自分の思惑通りに運んでいく。

流心の脇、巻き返し、小さな落ち込み、肩と魚が付いていそうなポイントを直撃するようにニンフィングキャストをし、ダイレクトコンタクトを取っていく。

フルストレッチアームにハーフストレッチ。ロッドの角度を微細に変化させながら、ローリングドリフトに揺らぎを加える。
ここで来るだろうというポイントで魚は出続けた。そのほとんどは上顎にカッチリとジグニンフが掛かっていた。この掛かり方ならバレるはずもない。理想的なフックセットだ。

スピード感あふれるアグレッシブなユーロニンフが、完璧に通用した。
待ちの釣りではなく攻めに攻めていけるこのニンフィングのアップテンポ感は正直快感である。

その最大のカギとなるのが「バウンディングキャスト」というオリジナルのニンフィングキャスト。このキャストのおかげで、2ヘビーニンフも驚くほど軽快に打ち返していける。力強い3拍子で奏でるこのキャストは、フライキャスティングの盲点を突いた独特のドライブが掛かったニンフィングキャストである。


「北海道の川でも、ユーロニンフィングが通用するかどうか試したかったんですよね」

私が言うと、

「十分すぎるくらいじゃないですか!」

と、Mさん。
驚きを隠している様子が分かる。

私は十分な手応えを感じていた。